2018年3月発行の『モンゴル学会紀要』に当方の書評「風戸真理・尾崎孝宏・高倉浩樹編『モンゴル牧畜社会をめぐるモノの生産・流通・消費』」が掲載されました。電子版もいずれ公開されると思われます。
今回評したのは、モンゴルをフィールドとする気鋭・中堅の人類学者による調査プロジェクトの成果に基づく論集です。ともすれば自給的に捉えられがちなモンゴル牧民の経済生活について、生産に加えて流通・消費を正面に据えて論じた意義深い研究です。
トップ画像で、昨年訪れた遊牧民の食卓を挙げてみました。ホーショール(揚げ餃子風のモンゴル料理)に乳茶、乳製品など、確かに家畜由来の「伝統的」食品は並んでいますが、それらの中にはホーショールの衣に使う小麦や茶葉のように、近代以前から交易によって得てきたものがあります。さらに食料で言えばパンが並び、それらを出すための食器に至っては、牧民自身が生産したものでないことは、ご覧になれば分かるはずです。
つまり、モンゴル牧民は家畜生産のみならず、それらを元手とした交換によって生活を営んでいるわけです。あるいは、この点は他の牧畜民も同様かも知れません。そうであれば、牧民の経済・生活を解明する上で、交換や交換に基づく消費は研究されて当然のものなはずです。
しかし、今までの研究では、それらが論点に据えられてこなかったような印象があります。この研究の意義を私が強調するのも、このような背景からのものです。
とはいえ、この研究についてのこれ以上の詳しい内容、さらに私の論点につきましては、ネタバレになるので控えておきましょう。論集は東北大学機関リポジトリ等を通じてダウンロードが可能ですので、下記のリンク先からお読みください。
また、本エントリ執筆時点で日本モンゴル学会のサイトでは『紀要』第48号はまだ公開されていないのですが、いずれ公開されるものと思います。その際は、あらためてこちらでもリンクを貼るようにしますので、しばらくお待ちください。