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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

旅を終えて(「シリーズ土佐の駅」あとがき)

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 「シリーズ土佐の駅」、高知県内の171の駅を巡り、昨日無事終了しました。

 

 

 高知のことを書き綴って行くときに、何か目玉が欲しい。何かテーマをもって高知を楽しみたい。そんな中で思いついたのが、高知県内の各駅を訪れた際に、その訪問記を記していくというものでした。

 最初の頃は、折を見てぼちぼちと書いて行けばいいと思っていましたし、県内全ての駅を巡るところまでは想像していませんでした。その後シリーズが進むにつれて、「こうなったら全駅を訪れたい」という思いがもたげてきたのですが、それでも4年ぐらいはかかるだろうというのが見立てでした。

 それが気がついてみれば、第1回の高知駅前駅を出発してから2年半ちょっとでの完結。自分でも意外感があります。ただ、自分の予想を超えて旅が加速していったのは、単なる「乗り鉄」という趣味だけが理由ではない気がします。やはり、訪れた先々で見かける、高知県内の各駅やその周辺の風景が、私を旅に駆り立てたのだと思います。

 それらの何が魅力なのか。これを語るのは本当に難しいです。ただ、一つだけ、確実に言える伝えられる発見があります。どんなに利用者が少なそうな駅であっても、そこに人の息吹を感じたことです。

 これまでの旅では、ダイヤの都合もあって、駅に降りて次の列車までの時間が長くなることは少なからずありました。駅の周りで2時間以上、周辺を歩く以外は何もせず、ぼうっと過ごしたこともあります。そしてそういう駅に限って、その間人に会うことはおろか、人の姿すら見かけないこともざらでした。

 ですが、そんな駅でも、確実に人の手が入って守られていることは、その佇まいから感じ取ることができました。

 掃除の行き届いた待合室に、ペンキがきちんと塗られたベンチ。

 その上に置かれた座布団。

 生けられた花。

 手書きの周辺の案内図。

 都会の人々から見たら、信じられないほど利用客の少ない駅かも知れません。その数字だけを見て、無駄にしか見えない人もいることでしょう。

 でも、その駅には、間違いなく沿線の人々の息吹がある。その駅を守ろうとする人々の存在が感じられる。

 鉄道を愛し、その存続を願う者にとって、その事実は、何より心強いことなのです。観光だなんだでもてはやされようが、地元の人々の暮らしから離れた鉄道路線は、いちばん大事なはずの公共交通としての役割をもはや果たせないのですから。

 どんなに乗降客の少ない駅でも、愛しむ人がいる。私が県内の駅を訪れ続けたのは、その事実を各駅であらためて知ることができるからだったのかも知れません。

 

 また、この旅の途中で、いろいろな方からのお言葉や励ましも頂きました。鉄道旅行についてお尋ねを受けたこともあれば、自宅の最寄駅が取り上げられたというので「待ってました!」との言葉を頂いたこともあります。

 それらのポジティブな反応も、旅を続ける原動力になりました。あらためて、ここでお礼申し上げます。ありがとうございました。

 

 さて、「シリーズ土佐の駅」としての高知県内各駅の旅は、ひとまずこれで終了です(多少付け足しはあるかも知れませんが、駅自体はすべて訪問を終えた……はず)。

 次は、このエントリをお読みの皆さん、そう、あなたが旅を始める番です。

 大きな駅、小さな駅。

 海のそばの駅。山の中の駅。

 川沿い、あるいは川の上の駅。

 町の中の駅。周囲に人家がほとんど見当たらない駅。

 そんなさまざまな駅の中で、あなたご自身のお気に入りの駅の旅へ、ぜひ足を踏み出してみてください。それが、高知の鉄道を愛する私からのお願いです。