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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

常磐線竜田駅~富岡駅間運転再開、乗ってきました

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 2017年10月21日、東日本大震災から6年7ヶ月ぶりにJR常磐線竜田駅から富岡駅間で営業運転が再開されました。その再開当日、早速乗ってきました。

 

 

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 いわき駅に着くと、運転再開を祝う幟が各所に立っていました。「開通」という言葉になっていることに、6年半を超える長い年月を感じます。

 

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 幟と言えば、別の場所にはこんなのも。映画ですっかり有名となったフラ・ガールが、地元のコメの包装になっているのです。フラ・ガール、こんなところまでかり出されるのかと驚きましたが、これがいわきのコメの名誉回復につながるならお安い御用なのかも知れません。

 

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 いわき駅の発車案内に、富岡/TOMIOKAの文字が帰ってきました。原ノ町・仙台への電車はまだありませんが、行く手を阻む不通区間は少しずつ解消されています。

 

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 ホームに降りてみると、普通電車と案内されていたのは、常磐線の特急「ひたち」の一代前の電車です。普通列車で使われているものがあるとは聞いていたのですが、自分が乗れるとは思っていなかったので、ラッキーです。

 

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 電車側面には普通富岡行の表示幕。前日までの行先は、ひとつ手前の竜田でした。いずれは原ノ町も登場し、あるいは仙台までのロングランも出てくるかも知れません。

 

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 車内に入ると、シートが向かい合わせに配置されています。ただ固定されているわけではなく、特急時代同様に回転することも、リクライニングを使うことも可能です。

 そして10時27分。雨風の中、電車は富岡に向けて出発しました。

 

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 いわきの市街地をしばらく走って、電車は山の中から海沿いへと出てきます。この日は台風接近前、太平洋は既に荒れ模様です。

 

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 30分余り電車は走り、竜田駅に到着しました。

 前日までの折り返し駅は、今日から途中駅。駅前から出ていた代行バスも富岡始発に代わり、駅は静けさを取り戻したようです。

 

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 こちらは以前竜田駅を訪れた時に撮った写真です。たったひと駅の間ではありますが、この時はまだ遮られていた線路に、再び電車が走ります。

 

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 電車は楢葉町からトンネルを抜け、いよいよ富岡町に入りました。次第に海に近づいていくと、まだ新しそうな大きな工場が見えました。調べてみると、大震災による廃棄物の仮設処理施設とのことです。

 

■ 富岡町仮設焼却施設|富岡町の状況|対象市町村|対策地域内廃棄物処理の取組みについて|福島県における取組み|放射性物質汚染廃棄物処理情報サイト|環境省

 

 ようやく人が戻り始めた富岡町。復旧もようやく始まったというのが現状なのでしょう。

 阪神・淡路大震災の6年7ヶ月後と言えば、2001年8月。その頃の西宮を思い返すと、あらためて、大震災と原発事故の爪痕を見せつけられた気がします。

 

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 ただ、ここは被災地である以前に、人々が生きてきた積み重ねがある街です。その積み重ねは、工事現場の外壁に描かれた春夏秋冬の風景に映し出されています。

 ちなみに、春のお祭りとして「さくらYOSAKOI」というのも掲げられていましたが、高知県民ともあろうものが撮り逃してしまいました……

 

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 そして電車は富岡駅へ。運転再開に備え、駅の施設は新たに作り直されています。

 

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 駅には運転再開を祝う横断幕が掲げられていました。横断幕の先は下り方面、常磐線で最後に残った不通区間です。

 

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 富岡駅から先の線路。信号機が使用停止になっていて、よく見ると線路も途中で断ち切られています。ただ不通区間の復旧と運転再開は決まっていて、2019年度の間には、夜ノ森、大野、双葉を経て、浪江で再び常磐線が一本につながります。

 

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 他の駅にもあった空間線量計。まるで恐れるに足らぬ値ですが、ここに来る限り、数値として目に見えるようになった放射線量と向き合わないわけにはいきません。

 

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 一方で目を奪われたのは、お気楽そのものの駅のポスター。誰がこんなアイディアを思いついたのかと。

 

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 富岡駅の列車案内板。運転を再開したとはいえ、本数は1日11本と決して多くはありません。このように、時間によっては2時間半も間が空くので、訪れる際には要注意です。

 

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 きっぷ売り場の運賃表。今はまだ途切れている右側に、やがて3つの駅の名前と運賃が入ります。

 

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 電光掲示の時刻表と、浪江方面の代行バスのポスター。かつて1日2本しかなかった代行バスはこの日から増便されており、かなり便利になったことと思います。もっとも、次に私が来るのはおそらく富岡・浪江間の運転再開後、代行バスに乗る機会はなさそうですが……

 

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 駅前に出てきました。改札から右手には、コンビニと食堂が併設されています。私も気にはなったのですが、既にレジは長蛇の列。買い物などしていたら帰りの電車を逃すので、やむなく断念しました。

 

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 その駅で売られていた記念のお弁当。われわれが訪れた時には、とうに完売になっていました。

 

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 中央に敷かれているのは、沿線を流れる木戸川を遡上する鮭のイクラ。見るからに食欲をそそられますし、手に入らないのは残念です。

 

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 ただ、地元の方々が運転再開記念ですいとんを振る舞っていて、こちらにはありつけました。

 すいとんが桜色になっている「さくらすいとん」。何せこの天気、身体に沁みわたります。

 

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 富岡での折り返し時間は20分程度。他よりも余裕のある電車を選んだつもりですが、それでも時間はあっという間に過ぎていきます。いろいろ気になるものはありますが、帰りの電車を乗り逃したら一大事。早々に駅に戻ることにします。

 

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 竜田駅で折り返していた時には、線路をふさぐ形で仮の通路が通されていましたが、富岡駅では新しい跨線橋ができています。

 

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 跨線橋からいわき方面を眺めてみました。

 今の駅は以前より北側にできています。この写真では見づらいかも知れませんが、右側のホームの奥には境目があり、その先はかつての駅のホームと思しき跡が伸びています。

 そして駅の左右にはコンクリートの橋脚が建設中。いずれこの上に陸橋ができるはずで、そうなればこの眺めは確実に遮られます。今のうちに来ることができて、本当に良かったです。

 

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 いわき方面に伸びる線路。今走る電車は1日10本あまりですが、いずれ南北の線路がつながれば、昔のように特急が行き交い、文字通りの幹線の姿を取り戻す……そんな未来を期待しています。