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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

初めてのモンゴル「観光旅行」(10)タヒ(モウコノウマ)を見にホスタイ国定公園へ

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 お昼をよばれた遊牧民世帯を発って、この日のメインイベントに向かいます。近くのホスタイ国定公園に入り、野生の馬タヒ(モウコノウマ)を見に行くのです。しかし相手は野生動物、どこにいるかは分かりません。はたして出会えるのか!?

 

 

 今回訪れるホスタイ国定公園は、ウランバートルの南西部約100キロのところにある特別保護区です。

 

www.hustai.mn

 

 ここではモウコノウマ、モンゴル語でタヒと呼ばれる野生種の馬が生息しています。タヒは野生動物としてはいちど絶滅したのですが、オランダの動物園に残っていたものを野性化に戻す試みが行われ、今ではタヒの頭数は200頭以上とも300頭以上とも言われるまで増えています。

 

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 固定家屋はおろかゲルすらない国定公園内に、いきなり2階建てのビルが現れました。タヒの研究所だそうです。

 

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 斜面に建物と、その背後に通信施設が置かれています。タヒ研究の最前線に来たのを実感します。もっとも、肝心のタヒはまだ見ていませんが……

 

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 国定公園内は立ち入りが制限され、自動車も指定されたルート以外を走ることは認められていません。僅かなダートと送電線を除けば、丘陵地に豊かな草原が広がります。

 

 「マーモットがいました!」突然ガイドさんの声が飛びます。しばらくは指を差す先を見てもよく分からなかったのですが、何とか目を凝らすと、確かに動くものがいます。

 

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 画像真ん中左寄り、大きなお腹と尻尾の生き物。モンゴル語で「タルバガ(ン)」と呼ばれるマーモットの一種です。

 

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 一匹目が見つかると、二匹目以降も次々と見つかっていきます。草原にところどころある穴が、おそらく彼らの寝床です。

 

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 幸いにしてアップで写真が撮れました。あらためて見ると、横に広がっているというか、平ぺったいというか。この方が肉食獣からは目立ちにくいんでしょうか。これから寒くなる時期、脂肪を蓄えているのかも知れませんが。

 

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 タルバガは毛皮や肉(これがまた脂が乗って旨い)を目的に乱獲が進んだこともあり、現在はモンゴル国内では狩猟が禁止されています。それで数が回復したかどうかは分かりませんが、この後も何匹か草原を走っているのを見かけました。

 

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 留守だったので断定はできませんが、おそらくタルバガの巣穴です。

 ただタルバガはいいとして、肝心のタヒがなかなか見つからない、と思っていたら、流石はプロ、ついにガイドさんがタヒの姿を発見したようです。急いで指し示す先へとズームを効かせると、確かに馬の姿が見えました!

 

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 山のふもとでタヒが草を食んでいます。ただ車で近づくわけには行かないので、歩いていくことにします。

 

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 ついに見つけたタヒ。中には親子連れもいるようで、のんびりと食事中です。

 

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 真ん中の馬はまだ子どものようです。人間の活動や他種の馬から隔離された土地で、すくすくと育っていくことでしょう。

 

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 結構近くまできましたが、タヒは警戒する様子は見せません。こちらも特に物音は立てていませんし、タヒからすれば人間の気配に気づいても十分走って逃げられる距離なはずですし、こちらは観察と撮影さえできれば良いので、お互い問題はありません。

 

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 さらに近づいてズームアップ。親子揃って草を食べ歩いています。

 

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 という感じで、割と近めの写真を取れるのは良いのですが、なかなかこちらを向いてくれないのは、ちょっと困りものです。

 

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 この2頭も。かといって、向こう側に回り込みようもないので(そのあいだにどこかに行ってしまうかも知れませんし)、なかなか悩ましいところです。

 

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 ようやく顔が多少見えました。とはいえ食事優先なので、鼻先まで見えないのは仕方ありません。

 

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 こんな感じで、いわゆるインスタ映えする写真を撮るのは無理っぽいです。まぁ、撮れたとしても投稿できる環境にいないわけですが。

 

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 ただそういうぜいたくな悩みはさておきましょう。相手は野生動物、国定公園に入れたからと言って出会える保証はどこにもなかったのです。野生のタヒがここまで間近で見られただけでも、十分に幸運だと思います。

 

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 ふと来し方を振り返ってみます。車で走ってきたのは向こうの山のふもとを左右に突っ切る道路、今小さく自動車が走っている道から、歩いてきたわけです。しかもその間は谷間もあります。ここに来るまでは何とも感じていなかったのですが、思えばよく歩いてくる気になったと思うような距離で、自分でも少し驚きました。

 

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