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人には添うてみよ、馬には乗ってみよ、酒には酔うてみよ。

高知交響楽団第158回定期演奏会に行ってきました

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 ピリオド奏法によるベートーヴェン交響曲全曲演奏という金字塔を打ち立てた高知交響楽団。その新たな挑戦となる定期演奏会に行ってきました。

 

 

  今回の演奏会はこれまでとは打って変わって、全曲アメリカ音楽、しかもオープニング以外は同規模の作品が3並ぶ4曲プログラムという、それまでとは全く異なる方向のものです。

 しかも、よくある作品と比べると、どの曲も演奏者の人数と楽器(特にパーカッションと木管)の種類がかなり多く要求されるわけで、人も楽器もよく集められたものだ、というのが最初の感想です。

 さらに、アメリカ音楽と言っても時代によって変化がみられるわけで、この日のプログラムは時系列で組まれてはいなかったものの、そのような変化を感じ取れるものになっていました。では、それぞれの曲について。

 

● キャンディード序曲(バーンスタイン

 ヘルベルト・フォン・カラヤンとともに20世紀後半を代表する指揮者として知られるレナード・バーンスタインですが、3曲の交響曲や舞台音楽に代表される作曲家の顔も持っています。この曲も彼の舞台音楽としては知られている部類に入るでしょう。ちなみにここで「舞台」音楽としたのは、プログラムにもある通り「キャンディード」はオペラともミュージカルとも言い得る作品としばしば言われるためです。私自身は観たことがないのですが……

 音楽を一言でいうなら、古き良き戦後の純音楽、という印象です。映画音楽的でもあり、スラプスティックなところはアメリカの昔ながらのカートゥーンという雰囲気もあります。中には、どこか若い頃のショスタコーヴィチを思い起こさせる部分もあり、その分ユーモラスではあっても毒が混ざっていそうな感じを受けました。あるいは、ロシアやドイツからの亡命者を受け入れて発展した後のアメリカ音楽、とも言えそうです。

 のっけから迫力と技巧、テンポ感とリズム感が求められる作品で、相当苦労はあったと思います。しかも同様の難曲が続くことで、体力温存というのが無意識に働いたような気もします。とはいえ、上手くまとめて最初の関門をクリアした、というところでしょうか。

 

● 「ウエスト・サイド物語」よりシンフォニック・ダンス(バーンスタイン

 言わずと知れたバーンスタインの代表作。舞台で観た方、映画で観た方、あるいはどちらも観てなくともあらすじは聞いたことがある方などなど、この作品を全く知らないという方はほとんどいないことでしょう。

 今回演奏されたのは、バーンスタインが編曲した組曲作品です。ただし舞台での演奏順からは入れ替えられており、演奏会用作品というのが強く意識されていることが伺えます。なお、全曲が切れ目なく演奏されます。

 舞台や映画をご存知なら、この曲もまた演奏が大変そうなのはご理解いただけるでしょう。そんな中でもパーカッションと、半ばリズム・セクションと化した金管中低音は大活躍していましたが、それゆえに高音が押され気味だったようにも感じました(ちなみに真ん中辺りで聴いていました)。楽器のベルが譜面の真正面にあったために音が遮られたことが主な理由でしょうが、とりわけトランペットに関しては、4曲すべて3人のみ、他にアシスタントなしで演奏しなければならなかったのを思うと、それはそれは大変だったことでしょう。

 合わせて忘れてはならないのが、「マンボ」の掛け声がなかったこと。正直なところ座席からつんのめりそうになりましたが、そもそも楽譜には記載されていないという話もあります。楽譜が見られれば良いのですが著作権の関係もありますので、まずはレニーの自作自演辺りで確認してみましょうか。

 

● パリのアメリカ人(ガーシュウィン

 前半2曲が戦後のアメリカ音楽なら、こちらは戦前。先程書いた亡命音楽家の影響が及ぶ以前のものになります。それだけに後期ロマン派を受け継いだような壮麗なムードはないのですが、アメリカ特有の音楽、とりわけジャズを取り入れることで、ヨーロッパとは異なる独自の表現を確立している点では共通しています。こう書くと、紋切り型も極まった感じですが(汗)、ただそのような表現故に、タイトルの中では「パリ」よりも「アメリカ人」をより強く感じるようにはなっています。

 こちらもパーカッションと金管中低音が八面六臂。各楽器のソロもキメてきます。最後はそれまでに出てきたテーマが絡み合ってフィナーレを構築するのですが、今回の演奏は各テーマを感じ取りやすいものだったように思います。

 

■ スター・ウォーズ組曲(ウィリアムズ)

 クラシックの演奏会でスター・ウォーズ!?と思われた方もいらっしゃることでしょう。ですが、ウェスト・サイド物語が演奏されても問題ないなら、スター・ウォーズもプログラムから排除されるいわれはありません。しかも、ウィリアムズは映画音楽のみならず、テューバ等の協奏曲を書いた現代作曲家なのです。むしろプログラムにもあるように、すでにクラシックの定番と化したオペラや舞台の付随音楽とともに、これからの演奏会でスター・ウォーズの音楽が演奏される機会は増えることでしょう。

 組曲はメイン・テーマはもちろん、帝国のマーチ(○波少年のTプロデューサーダース・ベイダーのテーマとしても知られる作品ですね)等有名どころを押さえたもの。誰もが聞いたことのある作品なだけにプレッシャーがかかったでしょうが、正攻法できちんと仕上げられたように思いました。もっとも、映画が終わるとクレジットを見ずに席を立つ人からすれば、エンド・タイトルは初耳だったかも知れませんが。

 

 そして、アンコールはアンダーソンのシンコペーテッド・クロック。これもまた、アメリカなればこそのクラシック作品であります。