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人には添うてみよ、馬には乗ってみよ、酒には酔うてみよ。

IMFとモンゴル政府,EFF(拡大信用供与措置)による支援実施で基本合意(後)支援実施と「出口戦略」への課題

けんきう モ国

 

 IMFとモンゴル政府との間で、EFF適用とその条件となる経済改革プログラムの実施に関する合意はなされました。今後の課題は、合意が確実に実行されるか、そしてEFF期間終了後にモンゴル経済が支援から自立できるかです。今回はこの2点について考えてみたいと思います。

 

 

 まず、今回の合意はあくまでIMFの担当者がモンゴル政府と交わしたものであり、今後はIMF理事会の承認を得る必要があります。一方モンゴル政府側も国会の承認を取り付けないといけません。一部報道では臨時国会が開催されると言われており、時期はツァガーン・サル(モンゴル旧正月。今年は今月末のどこかになる見込み)の後になるようです。

 

dnn.mn

※ ツァガーン・サル後に臨時国会開催」との大手紙ウドゥリーン・ソニンの記事。具体的日付はツァガーン・サル含め不明

 

 このうちIMF理事会の承認は、余程のことがない限り得られるでしょうが、問題はモンゴル側です。与党人民党は一院制国会で圧倒的多数を占めていますが(全76議席中65議席)、日本と異なり党議拘束がほとんど行われず、また議員の欠席による流会も珍しくないモンゴルの国会では、法案の早期可決は意外と困難です。他方、野党民主党国会内会派はこの件に関して協議中ですが、昨日バトバヤル前経済開発相とガラムガイバータル前民主党国会内会派代表(いずれも前国会議員)が汚職疑惑で逮捕される事態が起きており、ここでIMF支援案に反対しても支持が広がるかは微妙です。

 むしろ気になるのは国内世論の動向です。昨年後半からIMFによる支援のための交渉が行われてきましたが、その過程では目立った反対運動は起きていませんでした。ところが、EFF支援の合意が発表されると、モンゴルの労組中央組織(日本でいう「連合」みたいなものです)であるモンゴル労働組合連合が,1月に締結した労使官三者協定に違反するとして見直しを要請しました。

 

news.gogo.mn

 

 また、現時点での報道は事実関係のみを報じるものが目立ちますが、中には人民党を経済面で無為無策と批判、「人民党を銃撃してやる」という過激な見出しを掲げた論説もあります。

 

www.news.mn

※ 人民党を糾弾する論説。風刺画を記事内に掲げるのもモンゴルの報道ではよくあるパターン。

 

 今後改革プログラムの内容が明らかになるにつれて、影響をうける層を中心に、反対の声が広がることは十分予想されます。また、日本と比べてデモや抗議行動(その大多数は平和的なものですが)への敷居がバリアフリー構造並に低いモンゴルで、IMF支援に反対する運動が起きたとしても不思議はありません。そうなると、今年大統領選挙が控えているだけに、人民党はIMFをはじめ支援国・機関と国内世論の板挟み状態になりかねません。

 というわけで、EFF支援の実現に向けて、まずは国会の承認が最初の関門、それを通過したとしても、国内世論をどう説得するかが重い課題となりそうです。

 加えて、増税で歳入を増価させるにしても、税金を確実に徴収する能力がなければ絵に描いた餅です。特に高所得層への増税を行う場合、外国への租税回避をどう防ぐか。多聞に漏れずモンゴルでも2016年にパナマ文書が一時騒動になりましたし、国際機関や専門家の支援や指導を受けながら、徴税能力を向上させる必要はあります。

 次に「出口戦略」についてです。EFFは期間の区切りのある支援策であり、また融資なので償還の必要があります。ですので、当座は仕方ないとしても、要支援状態からどう脱却し、融資償還が可能となるような経済成長路線への復帰と外貨獲得をどう実現するかを考えておかなければなりません。もちろん改革プログラムはそのための政策なのですが、並行して成長戦略が必要となります。特に、2000年代半ばから続いた対中鉱物資源輸出超偏重型の経済を根本的に改めるとともに、外国投資の回復を実現することは必須です。さもなくば、現在の状況を脱しても、いずれまた危機に見舞われるリスクはあまり変わらないでしょう。

 そのためには、モンゴル最大のタワントルゴイ炭鉱開発について、昨年末にようやく再開された外国投資家との交渉は成功させなければなりません。同時に、先のエントリでマタイ代表が述べていたように、農牧業・観光業を軸とした産業の多様化にも、本気で取り組まないといけません。このうち前者は短期的、後者は中期的な課題という違いはありますが、共通するのは、国内資本のみならず外国投資の誘致が必要になってくるとのことです。ただ、現時点で投資家の信頼回復に向けた具体的努力が見えないだけに、誘致策を打っても投資が戻ってくるかは未知数です。

 

 以上、3回に分けてモンゴルにおけるIMF支援について見てきました。あくまで現時点では進行中の話ですし、支援策の実施が本決まりになること自体も先のことです。とはいえ、モンゴルに関心を持つ者としては、支援実施をある程度前提として、今後の見通しを立てておくことは必要と思い、長々と書いてきた次第です。

 

 ご参考までに、前篇・中篇のエントリです。

3710920269.hatenablog.jp

 

3710920269.hatenablog.jp