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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

From PDX, OR, USA (2) MAX Light Railでポートランド空港から市内へ

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 ポートランドは公共交通が発達した町です。とりわけ市内中心地を回る路面電車、中心地と郊外を結ぶLRT(ライトレール、次世代型路面電車)のMAXが整備されていることが特徴で、私も利用できるのを楽しみに、ポートランドまでやって来ました。

 

 飛行機が遅れてスケジュールが狂ったのは前回書いた通り。ただ、空港までタクシーとなると貧乏研究者には結構な負担ですし、チップの相場も分かったものではありません。まだMAXは動いているはずだと駅まで行くと、少し待てば来るようなので、当初の予定通り、空港からホテルまでLRTを乗り継いで行くことにしました。

 

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 MAXの路線図。赤、オレンジ、緑、黄色、青の5つの系統が、郊外と中心街とを結んでいます。

 

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 MAXの乗車券販売機。切符は利用時間・日数ごとに値段が分かれていて、その間は乗り降り自由になっています。今回はホテルに行くだけなので、一番安い2ドル50セントの2.5時間券を購入しました。改札はなく、ホーム上の券売機で切符を買ったらそのまま電車に乗り込むことになります。

 

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 電車がやって来ました。

 空港駅は赤系統の東の終点。ここから市街地を横断し、西側のターミナルのビーヴァートンまで走ります。

 

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 駅から市街地方面。15という速度制限標識(おそらく駅を出てすぐのカーブ)を見て、かなり厳しいと思ったのですが、考えたらここはアメリカ。時速15キロではなく15マイルで、キロに直せば24キロになるのでした。もっとも、それでも制限としては厳し目ですが。

 

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 車両は場所によって床の高さがプラットホームと一緒。この辺は日本の超低床電車と同じです。ただMAXの場合は自転車で乗り込むことも可能なようです。

 

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 車内には自転車と車椅子のスペースがそれぞれ明示されています。座席を見ると、場所によってはゴミが散らかったままのところもありますが、電車の内外に落書きがあるわけでもなく、危ない感じはありません。

 しばらくして電車は発車すると、ハイウェイ沿いの線路を軽快に走っていきます。先程も書いた通りで改札はなかったのですが、何駅か進むと検札係が乗り込んできて、乗客の切符をあらためはじめました。

 この方法、ヨーロッパでもよくある「信用乗車方式」というやり方です。この場合、列車のホームは改札機などで仕切られておらず、出入りは原則自由。乗客はホームへの立ち入りや列車への乗り降りの際に改札を受ける必要がなく、日本のワンマンカーと違ってどのドアからも列車に出入りできます。ただし、たまに回ってくる検札の時に有効な切符がなければ、理由のいかんに関わらず高額の罰金を払わないといけません。

 信用乗車方式は日本ではまったく馴染みのない方法ですが、とはいえ真っ当な切符さえ持っていれば、何も恐れることはありません。検札係に切符を見せると、チラッと見ただけで、にっこり笑って別の乗客のところに回っていきました。

 さらに電車は進み、ハイウェイと兼用の鉄橋でウィラメット川を渡ると、はたしてポートランド市の中心地に入ります。日曜の夜ということで、既に静まり返ったところが多いのですが、途中の一駅だけ人だかりができていました。見るとテントを張り、荷物を抱えたホームレスが集まっています。どんな土地でもあり得ることですが、ポートランドも住居や格差の問題を抱えているであろうことが見えた瞬間でした。

 

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 乗ってきた電車は市街地の中心に到着。ここで乗り換えます。真夜中はまだ遠いながらもすっかり人通りの少ない街を、電車は走り抜けていきます。

 

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 その後、すぐ近くの乗り場に移って電車を乗り換えたのですが、電車はホテルの手前の停留所止まりでした。わずかに距離が残る中、このまま待つのと歩くのと、どちらが無難だろうか。少し考えましたが、この先に向かう電車が来るまでは時間があります。ホテルまで暗い裏通りを歩くこともないようですし、ならばさっさと移動するに越したことはないと、歩きはじめることにしました。

 歩くこと数分。途中の交差点では、歩行者用信号にはボタンがついています。とりあえず押せば渡れるだろうとボタンを押してみると、信号機からいきなり男性の声が響きました。最初は何事か分かりませんでしたが、二度目以降に何とか聞いてみると、ただ一言"Wait!"。信号がすぐに変わるわけではないので、ボタンを押したら「待て!」ということのようです。

 これが日本なら、信号機は「信号が変わるまでしばらくお待ちください」ぐらいまで言いそうなところです。それはそれで丁寧過ぎるという気がしないでもないですが、ただ準備もなしに一言だけ言われても、何のことやら聞き取れないだけで終わりそうなところ、文を話してくれると、後から意味をとることもできるわけで、この点もう少し何とかならんのか、と思ったのでした。

 

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 そして何事もなくホテル到着。きっちり立ち止まって撮影すれば良かったのですが、すっかり気が急いてしまいました。

 ホテルについてチェックイン。ここでも相手のいうことが聴き取れるかどうか不安が頭をよぎります。ただフロントに行ってみると、レセプショニストがプリントを見せながら説明するので、内容は分からなくはありません。ただ、話し方はいかにも機械的で、手元の資料をずっと見たままなので、無味乾燥と言えばその通り、日本のホテルとはだいぶ違うなぁというのが印象でした。

 ともあれ説明を受けて部屋に進むのですが、いまいち廊下の作りが分からない。ちょっと迷っていると、

 「こっちの方向ですよ」

 先程のレセプショニストが笑顔で行先を指さします。先程は不愛想とは言わないまでも、表情をあまり感じなかっただけに、礼を言いながら少々不思議な感じがしました。

 マニュアル対応は機械的に、それ以外はフレンドリーに。それが彼女のパーソナリティなのか、いかにもアメリカな対応なのか。場数がまるでないだけに、何とも判断がつきません。

 

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 そしてようやく部屋に入りました。外が暗いのはよく分かっていますし、時計もだいぶ回っています。体感的にはとにかく、視覚的には夜も更けています。その視覚で自分を納得させることにして、24時間をはるかに上回る1日目の予定を終え、何とか寝ることにしたのでした。