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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

モンゴル訪問の記録より(10)遊牧民の宿営地で乗馬と乗ラクダ体験

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 シャーマンのキャンプの次は遊牧民の宿営地に行きました。遊牧民なんてそこらじゅうでキャンプを張ってるんじゃないかと思われた方、あくまで13世紀村の、当時をイメージした遊牧民の宿営地です。

 

 前回からちょっと間が空いたので、シャーマンの宿営所についてはこちらで。

 

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 ゲートの向こうにゲルが建っています。あからさまに現代のものもありますが、そうでないものの方がメインのようです。

 

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 入り口に何台も置かれた荷車。当時の輸送手段ですが、今でも使っているところは多いのでは。

 

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 大きな荷車上に建てられたゲル。先に訪れたハーンの宮殿も大きな台座の上に建てられていましたが、こちらは横に車輪がついていて、家畜を何頭も集めれば引っ張って行けるようになっています。

 

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 ゲルの中に入りました。中央には当時のかまどが置かれています。現代のものとは形も大きさも全く異なりますが、ゲルの中央にかまどが座するのは、今も昔も変わりません。

 

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 北側のちゃぶ台に置かれているのは乳製品。夏から初秋にかけての貴重なビタミン源です。真ん中の四角いものがアーロール、モンゴルのチーズと言われることもありますが、製法からすると酒粕と思っていただいた方が良いでしょう。手前と奥にあるのはウルムと呼ばれるもので、乳を加熱して分離した脂肪分です。バターのようなクリームのような独特の味は、モンゴルの乳製品の中でも割合親しみやすいものではないでしょうか。

 

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 ゲルの右側は女性の居場所。調理場やベッドに、ゆりかごもあります。ただ、赤ちゃんがいないからと言ってゆりかごを空にするのは縁起が悪いようで、代わりにツァツァルという乳の攪拌具が寝かされていました。

 

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 こちらは馬の汗取りとブラシ。馬は大事な交通手段、手入れは欠かせません。

 

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 こちらが食器棚。木製や真鍮製の調理器具が並んでいます。ただ、木はまだしも真鍮などの金属製品が当時どの程度普及していたかは、いまいち分かりません。

 

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 ゲルの外に出てみました。手前にある小さいゲルは、作業用だと思われます。人が寝起きするにはいささか小さいので無理がありそうですし。

 ちなみに、奥に見えるのが現代のゲルです。どこがどう違うか、見比べてみてください。

 

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 さて、この遊牧民の宿営地では馬とラクダがいて、乗ることができます。乗馬体験は結構あるのですが、ラクダに乗れるところはあまりないですし、私自身にとっては10数年ぶりのことです。

 

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 モンゴルのラクダはフタコブです。なので、鞍を付けたら前後のこぶの間にまたがります。

 これだけ背が高いと乗れないんじゃないか?とお思いの方。ラクダは人間を乗せるようしつけられていて、それと分かればしゃがんでくれます。

 

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 こんな風に、前足からひざまずきます。さらに後ろ足も畳むと、かなり楽に乗れるようになるのです。

 で、実際乗った時の写真があると分かりやすいと思うのですが、他の人の写真を使うと肖像権等いろいろややこしいので、ここは私を犠牲事例にしてみると、

 

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 という感じです。

 実際には先頭で引っ張ってもらって、周囲を歩く程度でしたが、それでも貴重な経験ができました。

 当たり前のことですが、ラクダでも馬でも、乗れば目線はかなり高くなります。騎馬民族というのは、この「高い目線」が当たり前の民族、という言い方もできるでしょう(「民族」という表現は、ここではあくまで便宜的に使っています)。

 とすると、この目線が当たり前の人々の視点からは、土に「這いつくばる」農耕民族がどう見えるだろうか……そんな疑問が、ふと頭をよぎりました。

 自分が身につけたものとはもちろん異なる視点ですが、その視点を体感的に理解しようとすることが、遊牧騎馬民族を理解するカギになるかも知れない。ラクダや馬の上で、そんなことも思ったりした次第です。