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人には添うてみよ、馬には乗ってみよ、酒には酔うてみよ。

2016モンゴル国会総選挙一口メモ(5)モンゴルの政党2. モンゴル人民党

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 2016モンゴル国会総選挙一口メモ、第5回はモンゴル最古の政党にして最大野党のモンゴル人民党についてです。ちなみに、こちらは「モンゴル」がつくのが正式名称で、民主党はつきません。たまにこの辺で混乱する向きも見かけるので念のため。

 

 

1. 前身は社会主義時代の支配政党

 モンゴル人民党の歴史は1910年代末に遡ります。モンゴルは長らく清朝の支配下にありましたが、1911年の辛亥革命で独立を宣言しました。ただ、その後中国の宗主権受け入れ、中国軍閥による自治権取り消し、ロシア白軍の占領などの激動に見舞われます。そんな中、ソヴィエトの支援により独立を回復しようと立ち上がった若者たちが「モンゴル人民党」を立ち上げます。そして、1921年に彼らの主導による人民革命が成功、1924年にはモンゴル人民共和国の成立が宣言されると、党名を「モンゴル人民革命党」に改称、社会主義体制における唯一の政党として、ソ連の支援下で国家を運営してきました*1

 しかし、前回のエントリで触れた民主化運動が勃発すると、モンゴル人民革命党は独裁政党の座を放棄、複数政党制の下で生き残る道を選びます。この選択は吉と出て、党は現在に至るまで、総選挙に勝てば政権与党第一党、負けたとしても(2014年から2015年の一時期を除き)最大野党の座を維持しています。

 疑問と言えば、モンゴル人民党はどこに行ったんだ?とお思いの方。実は、この党は2010年に党名を「モンゴル人民党」に戻しています。しかし、これに反発した勢力は党名解消を認めず、モンゴル人民革命党臨時本部を設立、これが現在のモンゴル人民革命党に至っています(当人たちからすれば自分たちこそが本家本元なのですが、手続き上は新党設立の形をとっています)。なので、「モンゴル人民党」「モンゴル人民革命党」という場合、いつの話なのかを明確にしておかないと、非常にややこしいことになります。

 

2.  地方で比較的強い支持

 前回書いた民主党の支持基盤の裏返しで、モンゴル人民党は地方で支持を得ています。また、高齢者層や社会主義時代のエリート層にも根強い支持があると思うのですが、この辺は検証可能なデータを持っていないので分かりません。誰か分析お願い。

 ただし、さらに裏を返せば、モンゴル人民党ウランバートルでの支持が比較的弱いことになります。とくに2008年の総選挙ではモンゴル人民党が勝ったものの、この結果に不満を爆発させたウランバートル市民による暴動が発生、モンゴル人民党本部が焼き打ちに遭い全焼するという事件が起きています。トップの写真は、全焼後に再建されたモンゴル人民党本部「独立宮殿」です。そして、そのウランバートルの人口が民主化以降激増を続けているのです。

 

3. 民主党とは基本対立、ただし大連立を組むことも

 モンゴルの総選挙は、事実上現人民党(旧人民革命党)と現民主党(旧民主化勢力諸政党)の一騎打ちであり、2012年の総選挙を除けば第三勢力が力を持った例はありません。当然ながら、国会でも二大政党の対立が焦点となります。

 ですが、両者は時に大連立を組むこともあります。初の自由選挙となった1990年の総選挙では旧人民革命党が勝ったのですが、この時は新たな政治体制への移行を重視し、民主化勢力による諸政党との大連立が組まれました。その後、2004年には総選挙で両者の国会議席が同数となったことをきっかけに、2008年には総選挙後の暴動による混乱収拾、2014年にはアルタンホヤグ首相の解任を受け、それぞれ両者が連立政権を組んでいます。とくに2014年の連立政権は、それまでの非人民党連立政権に人民党が加わる形となり、無所属を除く全政党・同盟が参加するものとなりました。

 

4. 2016年総選挙は政権奪回の大チャンス、だが……

 モンゴル人民党は昨年連立政権から離脱、現在は最大野党となっています。一方、前回の総選挙からの4年間でモンゴルの経済は失速しており、人民党からすれば民主党主体の政権への不満や失望をてこに、政権奪回を狙う大チャンス到来です。完全小選挙区制への選挙制度変更も追い風です。

 もっとも、人民党にも弱みはあります。現人民革命党との分立により支持者層が分かれたことに加え、日本でも一時期話題になったパナマ文書では、人民党・民主党とも政治家の名前が取り沙汰されており、これがどう影響するかは未知数です。

 そして、最も気がかりなのが、人気政治家がいないという点です。今年3月にウランバートルと地方の一部の県で実施された世論調査「ポリトバロメートル」では、首都・各県ごとに政治家のレイティングを発表していますが、このうちトップ10が示されているウランバートルでは、ガンバータル国会議員を筆頭に人民党以外の名前が並び、人民党では9位のバトエルデネ議員が4.0%と10位のニャムドルジ議員が3.8%の支持を得ているのみです。一方、地方6県についてはトップ3のみ公表されており、このうち東部スフバータル県でバトソーリ国会議員が46.1%、西部ホブド県でビャンバツォグト議員が41.3%の高率を得てトップに立っているものの、あとは2位か3位、中南部ウブルハンガイ県のように人民党の政治家が1人もいないところもあります。何より、複数の調査地点でトップ3に入る政治家がいないのは気になります。政治家個人のネームバリューで全国的に票を集めるというのは難しそうです。

 人民党有利と見られる今回の選挙ですが、大チャンスを活かせるかどうかは人民党次第。楽に勝てると思うべきではないでしょう。

 

 ちなみに、現人民党と分立することとなった現モンゴル人民革命党については、次回のエントリにて。

 

3710920269.hatenablog.jp

 

 

 で、過去のエントリです。 

3710920269.hatenablog.jp

  

3710920269.hatenablog.jp

  

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*1:ただし、この過程では多分に漏れず政治闘争や大規模な粛清があったのですが、それを書き出すと話が逸れるので、ここではそのような事実があったことのみ触れておきます