きっかけは2つの記事でした。
1つ目は、秋田市の秋田港で40年以上稼働していたうどん・そばの自動販売機が、店の廃業に伴いなくなるという記事。
その後自販機は付近の道の駅を新天地とすることで存続が決まったそうです(河北新報記事)が、それはまた別の話。
この自販機引退の記事に、遠く離れた高知県民が食いつきました。なんでも、高知市内にもうどん・そばの自販機があって、今でも動いているのだとか。しかもその隣には、トーストサンドの自販機もあるそうです。
写真で見る限り、うどん・そばの自販機は同じような形式です。しかもその横は、いかにも昭和40年代的な写真とボタンの自販機。こんなのが現役で残っていたというから驚きです。さらにネットで調べてみると、実際に訪れた人の記録がそこそこ残っていて、以前から隠れた名所ではあったようです。
となれば是非行ってみねばということで、先日取材に行ってきました。
高知駅から北東へ、高速バスで通る道から折れてすぐのところに、その自販機コーナーはあります。ロードサイドの憩いの場だけあって、駐車場もちゃんとあります。
見せの外壁に書かれているのは取扱商品のようです。ドリンク、フードはもとより、おにぎり、うどん、そばも書いてます。サンドウィッチというのはトーストサンドのことでしょうか。
中に入ってみました。写真通りにうどん・そばの自販機とトーストサンドの自販機が並んでいます。って写真通りで当たり前なんですが、新聞・雑誌やネットで見た写真と実際の風景が同じだった時に、人はなぜ新たな発見であるかのように思ってしまうんでしょうね。
あと、ラーメンの自販機もあります。よくあるカップ麺の自販機だと、カップを買ってからお湯を入れますが、こちらは出来上がったラーメンが出てくるようです。
ラーメンの自販機の隣には、お菓子やおにぎりの自販機。機械としては年季が入ってそうですが、こういう形式のものは今も見ますよね。
さて、うどん・そばの方です。こちらは天ぷらうどんと天ぷらそばを扱っていて、どちらも250円。一瞬迷いましたが、元々うどんの話題から始まったことだからと、うどんを選びました。
なんと500円玉が使えます。500円玉自体が登場するはるか前にできたはずの機械なので、これまた驚きです。ただ投入口を見ると、外周いっぱいのところまで投入口が開いているので、おそらく後から改造したのでしょう。
そしてお金を入れてボタンを押すと、調理中のランプとともに、できあがりまで25秒のサインが点灯します。これが1秒ずつ減っていって、ゼロになるとともにうどんが出てきました。
こちらが天ぷらうどん。確かに天ぷらは入っていますが、むしろお揚げの方がメインという印象。ただ、ここで「きつねうどん」とかいうと関西対関東のバトルになるので、天ぷらにフォーカスしておいた方が無難でしょうね。
イメージとしては「食堂のうどん」です。冷凍うどんが普及する前のシステムです。そこは事前に理解しておく必要があります。
とはいえ、僚機が置かれていた激寒の秋田、しかも海沿いともなれば、うどんに限らず温かい汁物は重宝したことでしょうし、だからこそ今の今まで続いたのだと思います。ちなみに出汁はカツオのようですが、関西人が良く言う「あんな辛いうどん食えるか」ってことはないと思いました。
一方のトーストサンド。こちらはチーズとハムの2種類がありますが、チーズの方は売切れランプがついています。ただ高知経済新聞の記事にあった通り、機械の問題で扱えないようです。
こちらは500円玉は使えませんが、両替機があるので問題なし。
お金を入れてボタンを押すと、「トースト中」のランプが点灯。
30秒もしないうちに、アルミ箔に包まれたサンドウィッチと思しきものが出てきました。
中を開けると、こんがり焼けたトーストが出てきます。
サンドを開いてみました。確かにハムのトーストサンドです。間違いありません。
ところで、先程からチーズサンドを売ってないという話を書いています。修理を業者に頼むこともできないということですから、再開まではかなりかかると思った方が良さそうです。
ですが、だからといって諦めることはありません。どうしてもチーズのトーストサンドが食べたければ、作ればいいのです。
実はここに来る前に、ホット専用のスライスチーズを買ってきていました。これを使えば、チーズのトーストサンドを作ることなど雑作もありません。
チーズとハムのトーストサンド、いっちょ上がりです。
そう、「ない」からといって諦めればそれで終わり。むしろ事前に情報が「ある」のですから、それを基に対策を立てることを考えれば良いのです。これは悪条件の中で地域の活性化を目指す時にも通じる考え方です。
という与太話はさておき、今回取材に行ったのは食事時ではなかったのですが、自販機コーナーには多くはないものの、入れ代わり立ち代わりお客さんが来ていました。途中からは自販機の管理の方も来ていましたが、顔なじみなのか、親しげに言葉を交わすお客さんもいたぐらいです。
私自身は自販機の物珍しさで訪れてみたのですが、私から見たら珍しい自販機は、他のお客さんにはすっかり馴染んでいて、むしろ珍しがる方が珍しがられるという雰囲気すらあったかも知れません。
ただ考えてみれば、そのぐらい馴染まれているからこそ、年代物の自販機が今日まで現役で動いてこられたんですよね。物珍しさだけではないからこそ長続きしたのだ、というのを教えられた気がします。
とはいえ、目下の課題はチーズサンド。今回の自作版はスタッフが美味しく頂きましたが、自販機のものが復活したら、また行ってみたいと思います。
でもラーメンも気になるな。