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「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

阪神・淡路大震災で被災の狛犬、約21年ぶりに甦る

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 私が育った兵庫県西宮市。その中心部に位置する西宮神社は、戎神社の総本社。1月は初詣に続いて十日戎が開かれます。9日の宵戎、10日の本宮、11日の残り福と、1年で最も賑わいを見せる日々。私も子ども時分から、毎年この時期を楽しみにしていたものです。

 そして、その賑わいが収まった頃、1月17日が再びやって来ます。

 

 

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 今から21年前、午前5時46分30秒に発生した地震は、神戸・阪神間・淡路島を中心に、破壊的な被害をもたらしました。東日本大震災を経験してしまった今となっては、その規模は霞んでしまうかも知れませんが、あまりにも多くの人々に、街に、消えることのない傷跡を残しました。

 あの震災は西宮神社にも襲いかかりました。後でご紹介する神戸新聞の記事で振り返ると、社務所が全壊、本殿が半壊し、灯籠等が散乱。また、神社内の末社の1つである松尾神社が倒壊、狛犬一対も台座から落下して損壊しました。狛犬はその後行方が分からなくなっていたそうなのですが、昨年偶然発見され、このほど21年ぶりに再び鎮座することになったそうです。

 

www.kobe-np.co.jp

 

 記事で見る狛犬の姿は、痛ましいと言うより他ありません。 実際に見ると、もっと衝撃的なのでしょう。

 ただ、もう21年も経ってしまった震災を思い出し、後の教訓とするには、この姿に胸を打たれなければならないのかも知れません。

 個人的には、西宮神社末社の中でも松尾神社は思い入れがあります。酒の神様ということで、酒好きの父が西宮神社に詣でるたびに立ち寄っていました(今も立ち寄ってるはず)し、私も長じては同様に参詣するようにしてきました。

 ただ、酒呑みとしてその狛犬を拝んだことは、当然ながら今まで一度もありません。機会ができれば、甦った狛犬のところに参らなければならないかと思ってはいます。

 1995年1月17日があったことを、覚えておいてほしい。忘れないでほしい。何より、忘れたくない……ただ、そうは言っても阪神間・関西を遠く離れてしまい、震災の経験など誰も経験していないであろう人々の中で、押し寄せる日々の仕事に呑み込まれていると、1月17日を、その意味を思い起こすことなく過ごしてしまいそうになっていたのが、悲しいですが実際のところです。

 そんな中で、この一対の狛犬が、私にとって「あの日」を忘却の瀬戸際から引き戻しました。それは私の心から取れかけていた重石を付け直すものでもありますが、あえて付けて歩いていかなければならない。

 それが、「あの日」から21年も生き延びてきた私が示せる、せめてもの誠だと思っています。

 

(参考)

3710920269.hatenablog.jp