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人には添うてみよ、馬には乗ってみよ、酒には酔うてみよ。

高知大学交響楽団第56回定期演奏会に行ってきました

 私はクラヲタシック音楽が好きなのですが、高知に来てから生の演奏を聴く機会がどうしても減ってしまいました。ただ高知も芸術の秋、今月は県内オーケストラの演奏会が2回あります。今日はそのうちの1つ、高知大学交響楽団の第56回定期演奏会に行ってきました。

 

 今年の演奏会のプログラムはオープニング、サブメイン、メインがすべて北欧ものとなかなか意欲的。うち2曲がシベリウスと、個人的な好みでもあるので、非常に楽しみにしていたところです。

 オープニングはシベリウス「カレリア」序曲。「カレリア」は劇音楽だったのですが、そこから抜粋した組曲は割合録音が多いのに対し、序曲はあまり見かけません。まして生の演奏を聴くのは初めてですし、日本ではそうそうない貴重な機会です。

 シベリウスの音楽は若い頃と年を重ねてからで大きく変化していますが、「カレリア」は前者の部類に入ります。この時期の管弦楽曲は、編成が比較的大きかったり*1、管楽器(特に金管)の出番がやたらあったり(といって弦楽器が少ないわけではない)、良く言えば豊穣、別の言い方をすれば、使いたい楽器や手法をとにかく盛り込んだ感じがあります。なのでどの楽器もなんだかんだとしんどかったと思います。お疲れ様でした。

 第2曲はグリーグペール・ギュント」より抜粋。こちらも元は劇音楽で、これを基に2つの組曲が後に作曲されました。第1組曲の1曲目「朝」は、聴けば分かる方も多いことでしょう*2。今回はその第1組曲の4曲全てと、第2組曲のうち3曲目の「ペール・ギュントの帰郷」、4曲目の「ソルヴェイの歌」が演奏されました。音楽の教科書にも掲載される有名どころの第1組曲だけでも十分プログラムは組めると思うのですが、どうしても陰に隠れがちな第2組曲の作品を入れることで、面白味が増したと思います。どういう経緯でこの選曲になったのかもまた興味深いところですが。

 メインの第3曲はシベリウス交響曲第2番。現在演奏可能なシベリウスの全作品の中で、おそらく最も有名かつ演奏機会の多い定番作品の1つです。1902年にこの曲が初演されると、当時ロシアの支配下にあったフィンランドの人々は、この作品がシベリウスの祖国に対する熱情を表現したものとして大歓迎しました。シベリウス自体はそのような解釈を否定、この曲が純粋に芸術的なものだとしているのですが、暗と明とのコントラストが明快で、かつ感動的な終結を遂げる作品なだけに、当時の人々がこの曲にフィンランドの将来への希望を見出したとしても不思議はありません。

 それだけに、この曲の王道的な演奏は「当時のフィンランド人がこんな曲を聴いたらそりゃいろいろ期待するよな」と納得できるようなものだと思います。もう少し具体的に言うと、暗いところは暗く、明るいところは明るくという形で、コントラストをハッキリさせること、そして最後は大団円を形作ることです。

 その点で言えば、今回の演奏は十分合格点をつけられるものでした。第2楽章は重苦しさや(適切な表現か分かりませんが)悲劇性を十分感じられましたし、第4楽章は明暗の入れ変わりや力強い結末を十分形作ることができていたと思います。テンポを落として無難に演奏する手もありましたが、そのような安全策に流れる感じを受けなかった点も好感を持っています。

 細かい部分を挙げていけば、ケチのつけどころはいくつもあるかも知れません。ですが、私からすればライブへの飢えが満たされたことも確かです。全体として好印象のもてる、良い演奏会でした。

*1:後のシベリウスの作品と比較すると、演奏に必要な人数が多かったり、楽器が多かったり、その両方だったりします。「カレリア」に関しては楽器が多いパターンと言えるでしょう

*2:このほか、4曲目「山の魔王の宮殿にて」の編曲が阪神タイガースのチャンステーマになっていましたが、どういうわけか短期間でお蔵入りになっています