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人には添うてみよ、馬には乗ってみよ、酒には酔うてみよ。

2015夏 宮城・常磐鉄道紀行(12)原ノ町から竜田へ(上)

てつ

 代行バスは出発の時間が来ると、特に何事もなく走り出しました。

 

 バスの乗客はまばらです。数えてみると、私を含めて9人でした。地元の人なのかどうかは分かりません。そうでないような気もします。

 一方で、運転士とは別に女性の乗務員が同乗しています。ツーマン運転の代行バスに乗るのは、私には初めてのことです。

 

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 バスは今まで乗ってきた各地の代行バスと同じように淡々と、国道6号線を走ります。変わったことと言えば、窓を開けてはいけないというぐらいです。もちろん空調が効いているのでわざわざ開ける理由もないのですが、この状況で窓を開けるなと言われると、いくら暢気な私でも緊張感が走ります。

 一方で、目の前のノートPCは調整中のボードが置かれたまま、空間線量率が表示されてはいません。もっとも線量率は別に測っているようで、乗務員に聞けば教えてくれるとのことです。推測をたくましくすれば、このPCは何かトラブルがあった時に使うのかも知れません。あるいは、そうでないのかも知れません。

 ただ、毎時100マイクロシーベルトレベル未満の(先週書きましたが、集団検診のX線検査よりはるかに低い値です)数字の高低にこだわったところで何の効果もなし。何より、PCの画面よりも気にすべきは、車窓の外です。

 

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 太平洋側、平野が続いています。はるか先に見えるのは丘でしょうか、海でしょうか。

 

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 反対の山側。傾き始めた夏の日差しを浴びるのは、無人の大地と、遠くに見える山々。

 

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 原ノ町からどのぐらい経ったか、帰還困難区域が近いことを告げる看板が現れました。バスの中でアナウンスがあるわけでもなければ、車内がざわつくこともありません。不通の常磐線に代わる日常の交通手段が、普通に走り去っていきます。

 

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 双葉町カントリーサインが見えてきました。ここから帰還困難区域に入ります。現在は通行証等の確認が不要となっているので、バスは特に停車することもなく、そのままの速度で走り続けます。

 

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 町の境界には警察官が立っています。

 一方で、イノシシへの注意を促す看板も。動物注意の標識なら高知の道路も見かけます。本来なら、ここも獣害に悩む町の1つで済んでいたのです。いや、獣害は本当に大変なのですが。イノシシとかシカとかサルとかハクビシンとか、まだまだいろいろ、はい……

 

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 現在地が帰還困難区域であることを示す標識や案内板は特に見当たりません。判断するには地図等で調べる必要があります。車窓を見ても、双葉町に入る前と同じく、誰の手も入らない間に夏草に覆い尽くされた土地が広がっていて、何がどう違うのかを見分けることなどできません。

 

 

 

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 国道6号線は往来が可能ですが、交差点を曲がって先に進もうとすれば、ゲートに阻まれます。関係者以外にとっては、ただ通過するだけの街がここにあります。

 

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 空間線量率を示す真新しい電光掲示板を見かけるようになりました。揺れるバスの中で撮ったので、どうにも見にくい写真なのが恥ずかしいところです。

 毎時1.492マイクロシーベルト。新聞で日本各地の空間線量率を見るのが当たり前になりましたが、そこで出てくる値と比べたら高いと思わざるを得ません。密封されたバスで通過するだけならまだしも、長く留まれるようになる日が来るのは、まだ遠いようです。

 

(参考)国道6号等の通過(帰還困難区域の特別通過交通制度の運用変更)について(2014年9月12日、PDF形式)