3710920269

「地域」研究者にして大学教員がお届けする「地域」のいろんなモノゴトや研究(?)もろもろ。

「斜め上」について

 先のエントリで書いた「斜め上」ですが、書くだけ書いて説明するのを忘れておりました。

 

 で、こちらは早い話が「モンゴル」となります。

 「モンゴル」というと主権国家(お堅い表現ですが、早い話が「独立国だよね」と多くの国々が認めている国家)のモンゴル国(Монгол Улс; Mongolia)に加えて、中国内モンゴル自治区(諸事情から当ブログでは基本的に「南モンゴル」とします)を思いつく方もいらっしゃるでしょう。あるいは、マニアなら他の地域も思いつくことと思います。マニアなら。

 ただそれらの中で、私が扱うのはほとんどの場合モンゴル国になります。ですので、当ブログで「モンゴル」という場合、このモンゴル国のことだと思ってください。

 で、それがなぜ「斜め上」なのか?

 一つには場所です。日本でよく見かける世界地図や地球儀で、東アジアの中でのモンゴル、あるいは日本から見たモンゴルの位置を見ていただければ、だいたい斜め上になります。

 「東アジア」の定義自体、実は考え始めるとややこしいですが、一般で言われているいろんな線引きの中にモンゴルを含めたとして、モンゴルが斜めで上に位置することは変わらないでしょう。

 もっとも、日本ではよく見かけない世界地図だと北ではなく南が上のものもあるわけで、それだと「斜め下」になってしまいます。

 それでもここで「斜め上」とするのは、東アジアにおけるモンゴルの「特殊さ」が原因です。

 「東アジア」をどのように定義するとして、その中に日本と朝鮮半島、中華圏(現在の中国と、少なくとも台湾)が入るのは間違いないでしょう。でないと、おそらく「東アジア」というくくり方自体が使い物にならないはずです。

 ただ、それらの社会とモンゴルの社会とを比べてみると、まぁいろいろ違いがあるわけです。

 例えば、農耕社会に対する遊牧社会。人によっては「文明」レベルの違いと表現することもあります。

 あるいは、人口の多い社会に対する、世界有数の少人口社会だったり。今年300万人目のモンゴル人が誕生するというので現地は盛り上がってるみたいですが、つまり今まで人口が300万人を割ってたんですね。

 政府の成り立ちを見ても、モンゴルは日本や韓国、台湾と同じ民主主義制度を取りながら、かつては中国や北朝鮮と同じ社会主義圏にあり、といいつつも両国とは異なりバリバリの旧東側メンバーで、「ソヴィエトの16番目の共和国」とかつて言われたほどの新ソ路線一辺倒をとってきた過去もあったり。

 そんな感じで、一事が万事「違い」を感じることは、日本で生まれ育った私の経験からもままあるわけです。

 一方、よくよく考えれば「違い」じゃないよな、と思うこともあります。

 最近でこそ「アジア」としてのアイデンティティが出てきたモンゴルですが、東側のメンバーとしてソヴィエト・東欧諸国と付き合いが深かったせいで「脱亜入欧」的な意識を持つ人に出くわすことが過去に一度ならずありました。

 要は、自分たちは『アジア』の人とは違う、という意識で、それが得てして「欧化した自分たち=上、欧化していないアジア=下という意識につながりかねなくて厄介なんですが、彼らの言う「アジア」に日本が入っていたりするんですね。

 それで驚くこともあったりしたわけですが、よくよく考えれば脱亜入欧」って日本の言葉で、さっきの「『脱亜入欧』的」というのは、上で書いたような人の意識を表すのに当てはめただけでしかないんですよね。

 今のはモンゴルと日本との比較ですが、さらにつらつらと考えていくと、日本をはじめ東アジアの他の社会とモンゴルとの間では、「違い」ばかりがあるようで、実は本当は共通する部分もあるんじゃないかと思ったりもするわけです。とすれば、その「共通点」にどんなものがあるのだろう、と探ってみるのは、それはそれで面白いことなんじゃないか、とも思うわけです。

 そして、かりに「共通点」が多いにせよ、少ないにせよ、モンゴルは日本にとって密につきあっていくべきパートナーでもあります。このブログでもこれからいろいろ書いていくつもりですが、両国にとってお互いの重要性は増すことはあっても減ることは(少なくとも超長期的なことを考えない限り)ないでしょう。

 とすれば、この「斜め上」にある国や、そこで暮らす人々について知っておくことは、決して損にはならないはずです。

 モンゴルと言えば草原や遊牧民や相撲の力士のイメージが強いでしょうし、それはそれで悪くないことですが、それら以外にもいろいろあるモンゴルの「リアル」……それを、当ブログでも折に触れて展開していければとは思っています。どうぞお付き合いください。

 

 ちなみに、私自身がいったい何者なのかについては、実は素性がネット上で公開されているので、そちらをどうぞ。


湊 邦生 - 研究者 - researchmap

 あるいは、以前書いたものの一部はこちらでまとめてたりします。


Kunio Minato | Ritsumeikan University - Academia.edu